震災後の心のケアについて 2018.6.20
記事カテゴリ:子育て
●はじめに
一昨日(6月18日)、大阪府北部は大きな地震に見舞われました。
地域の皆さま、ご自身の心身の調子はいかがですか?
溜まった疲れが心身の不調にでてきている方もいらっしゃると思います。
私自身は地震発生時に震源地近くにいて、「死んでしまうのでは」と怖い思いをしましたが、幸いなことに物品の被害だけで済みました。
現在も余震が続いており、見通しが不透明な状況ですから、不安や心配が払拭されるにはしばらく時間がかかると思います。
また、今は大丈夫でも、後になってしんどくなることもありますので、無理をせずに仕事を休むなど、心身のケアをこころがけていきましょう。
以下には、これまでの被災地支援の経験から、[被災後にみられる心身の反応]と[被災後の心のケアの考え方]について解説しています。
子どものケアについても書いていますので、小さな子どもさんがおられるご家庭の方には参考にしてもらえればと思います。
●知識をもっておくことの大切さ
震災後の症状や心のケアに関する知識があると、過剰な心配や不安による心身の不調を防ぐことに役立ちます。また、親が落ち着いて、子どもに適切に接することができると、子どもも安心し落ちつきを取り戻しやすいです。
知識があることで、不必要に不安がらずに済み、冷静に対処できるようになります。過度な不安により不調が増してしまう悪循環の防止のためにも、知識はもっておいてください。
1)震災後にみられる心身の反応について
震災後にみられる心身の反応には、次のようなものがあります。
❶ぼうっとする。頭がまわらない。じっくり考えることができない。集中できない。
❷常にドキドキする。音や周囲の様子に過度に敏感になる。救急車の音を聞くと怖い。
❸「いつ余震がくるのか」と心配で怖い。
❹安心して寝られない。何度も起きる。睡眠の質が悪い。
❺頭痛や腹痛、目まいや吐き気など、体の調子がおかしい。
❻落ち着きがなくなる。多弁になる。
❼イライラしやすくなる。怒りっぽくなる。
❽ふと涙がでる。今までの辛かったことが思い出されて悲しくて仕方がない。
❾元気が出ない。無口になる。
➓食欲がでない。
⓫過去の地震や災害、怖い出来事を思い出してしんどくなる。
⓬孤独感を感じる。
⓭子どもがなんだか幼なくなった(赤ちゃん返りをする)。親から離れようとしない。
⓮トイレやお風呂に一人で入れなくなる。ドアをあけたままお風呂に入ったり、トイレをする。
⓯子どもが「地震遊び」をする。机や物を揺らしたり、倒したりする(※詳しくは対応については参照)。
など。
※これらの症状がでるまでには、地震発生時からタイムラグがあります。
気持ちが落ち着いて心身の緊張がほどけると、それまでにたまったストレスが症状にあらわれます。
しかし、これらの症状は誰にでも起こり得る一時的な症状です。時間の経過(被害の程度にもよりますが約1週間~1カ月)とともに自然に収まっていくので安心してください。
もし、1カ月以上にわたって症状が続いたり、以前と比べて極端に変わった様子がみられる場合は、精神科医やカウンセラーなどの専門家に相談してください。
2)対応について
さきほど挙げた症状や反応は、たいていは自然に収まっていきますが、以下の対応を心がけていただくことで、収まりが良くなります。参考にしてください。
❶「安心感」を取り戻す。
災害後の心のケアの考え方は、「安心感」を取り戻すことです。安心感の基礎は「安全の確保」です。ですから、まずは「安全の確保」と「余震への備え」を行うことが重要です。
❷反応や様子の違いを理解し、認める。
地震によるダメ―ジの程度、症状としてあらわれる反応や様子は、地震発生時の状況や被害の程度、その人の家庭環境や感受性など、様々な要因によって異なります。
なので、同じ地震を経験しても、人によって反応や様子が違ってきます。
ですから、「そんなに怖がるな」「過剰に反応しすぎだ」と注意したり、「なんでそんなに平気なの!?」と責めたてるなど、相手を注意したり非難しないよう気をつけてください。
❸自分の体験や気持ちを安心して表現できる場所や雰囲気をつくる。
家庭、学校、地域のなかに安心して話せる場所があることがとても大事です。地震によって身体の中に湧いてくる怖い気持ちは、「死ぬかと思った」「とても怖かったよ」と言葉にして、身体の外に出すようにすると、心の安定につながります。
❹声かけ。
「大丈夫?」「怖かったね」「お家はどう?」といった相手を気遣った声かけが、優しさを運び、不安を和らげ、安心感をもたらしてくれます。大きな地震発生後は声をかけあい、人の絆によって安心感を育むことが重要です。
❺地震体験について、無理に話をさせない。
ひとこと声をかけて、子どもが言いたくなさそうであれば、無理に聴かないことが大切です。子どもが話してきたら、注意したり批判したりせずにふんふんと聴いてあげましょう。
地震発生後1週間以内に、地震について絵を描かせるなどの行為も調子の悪化を招く恐れがありますので、不用意に描かせないようにしてください。子どもが自発的に描く場合は別です。
❻涙を流す。
地震をはじめ、ショックな出来事があると、今まで積み重なっていた辛い出来事がいっしょに思い出されて、涙がでてくることもあります。そのようなときは、涙を無理にとめずに流すようにしましょう。涙をたくさん流せると心が落ちつきます。
❼スキンシップ。
抱き合ったり、肩をもんであげるなどのスキンシップも有効です(体の緊張をほぐす)。特に幼い子どもの場合には、手をにぎってあげたり、夜はくっついて一緒に寝るなどのスキンシップをまめにしてあげましょう。子どもからの求めにはできるかぎり応じてあげられると良いですが、無理をしすぎないように気をつけてくださいね。子どもからの要求に応えられないときは、「今は無理」というのでなく、「後でしてあげるね」などと、見通しを伝えてあげましょう。
❽寝具を工夫する。
枕にタオルを敷くなど、寝具を工夫するのも良い方法です。自分にとって肌触りの良いものを寝具にすることで、落ち着いて寝やすくなります。不安が和らぎます。場所を変えて寝る、部屋を少し明るくして寝るなども方法の1つです。
❾トイレやお風呂のドアをあけたままにしたい場合には、認めてあげましょう。時間の経過とともに落ち着いてきます。
➓楽しく過ごす。
地震発生時にいた場所には恐怖感情が結びつきやすいため、その場所に行ったり過ごすことを嫌がる場合があります。その場合は、その場所で楽しい時間を過ごせるように工夫すると、恐怖感情や恐怖体験が修正されて、症状の改善につながります。子どもの場合は、大人と楽しく過ごせることで調子が良くなります。子どもが幼い場合は、楽しく遊んであげることが心のケアになります。
⓫ペットをケアする
災害では、動物たちも怖い想いをしています。子どもと一緒に飼っている動物をさすったりしてあげることで、自身のケアにもつながります。
⓬親から離れなくなった子どもへの対処
親から離れなくなった子どもへの対処は、安心感を大切にしながら、親から離れる作業をスモールステップで行っていきましょう。まずは親の見える範囲からはじめて、「大丈夫だったね」「大丈夫だね。安心だね」と安心感を確認しながら、少しずつ距離を離していくことがよいです。子どもが安心感を感じている場所があるなら、その場所をうまく活用できるとよいですね。子どもが親から離れない場合には、親の不安が影響している場合もあるので、親が安心感を取り戻すことも意識してください。好きなテレビをみる、きれいな景色を見てのんびりするなど、気持ちをリフレッシュさせることも有効です。
⓭「地震遊び」への対処
「地震遊び」は、地震後に子どもたちが見せる反応の1つです。「地震遊び」は、安全に守られた空間のなかで行うことにより、「今は安全だ」という安心感を取り戻すための行為です。ですから、「そんな不謹慎なことをやってはいけません」と注意するのではなく、見守り、「怖かったね。でも今は安心だ」などと声をかけてあげてください。
●終わりに
被災初期(※災害の規模によりますが1カ月程度)は、皆で体験を共有しやすく団結しやすいのですが、時間が経つに連れ、心身の回復の差が大きくなり、体験や気持ちを共有することができにくくなります。そのため、一人だけ置いていかれたように感じてしんどくなってしまうこともあります。
そのような辛さを抱えなくてすむように、「調子はどう?」と声をかけあってくださいね。心の通いあった繋がりが傷ついた心を少しずつ癒してくれることでしょう。
さいごになりましたが、今回の地震で大切な方を亡くされたご家族の皆さまには、心からお悔やみもうしあげます。
てだのふあカウンセリングルーム
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