新型コロナウィルス感染と感染予防措置等における心理的影響とメンタルケアについて 2020年4月25日更新
記事カテゴリ:心理カウンセリング
現在、新型コロナウィルスが世界中で猛威を振るっており、外出自粛要請が出され、感染や外出への社会の目が厳しくなっています。そして、最近のニュース報道を見ましても、先行きの見えない経済不安や外出自粛によって、「コロナ疲れ」「コロナうつ」「家庭におけるDVの増加」「感染者で亡くなった遺族の苦しみ」等がとりあげられるようになりました。
そこで、現在の状況下で想定しうる心理的影響や反応と、メンタルケアについて、これまでの被災地支援の経験を活かしてまとめてみました。
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今回の感染症災害では、
・先行きの不透明さ
・日々変わる状況や措置による対応修正の連続
・経済へのダメージによる生活不安
・外出自粛にともなう社会的交流の遮断
・ウィルス感染への不安や恐怖
・ウィルス感染にともなう家族や著名人の死
など、世界中の人々すべてが、様々なストレスに見舞われています。
また、感染症医療に従事している方は、ウィルス感染への不安や恐怖のなか、激務を強いられています。
そして、感染予防措置や生活補償政策をめぐっては、様々な立場から様々な意見や批判が飛び交い、感情的な衝突も目立ってきています。
このような状況下にあると、心や考え方がかたくなり、イライラしやすくなっても自然なことです。
そのうえ、今回の感染症災害の特徴でもありますが、今は外出自粛による社会交流の遮断によって、ストレス発散がおもうようにできない状況です。その分、気持ちがはりつめやすく、強い言葉をもちいたり、心身の調子を崩しやすい状況になっています。
そこで、東日本大震災や熊本大分地震等における被災地支援の経験を活かして、メンタルケアの考え方や留意点について、以下にまとめましたので参考にしてください。
① 他者を傷つけない
多くの人がイライラしやすくなっています。また、政府の生活補償政策などをはじめ、誰もが政治の影響下にあります。東日本大震災の原発事故の例を見ても、政治の影響下に晒されると、様々な立場や考え方の違いなどにより、人々が衝突しやすくなります。今もネットをみていると、政治家以外の人々が互いに批判しっている様子がたくさんうかがえます。
今は感染症災害時です。「戦争」という表現をつかっている人がいますが、私は好みません。「感染症災害」です。
災害時にあっては、様々な考え方や感じ方があることを認め、人間関係が悪化しないように、アサーティブコミュニケーションを心がけることが大切です。社会交流が難しく逃げ道がない今の状況で、仮に家族関係が悪化してしまうと、家族全員が苦しくなってしまいます。結果的に、DVや殺人まで起こってしまう可能性がありますので、そのような状況は避けられねばなりません。
※アサーティブコミュニケーションとは・・・自分や他者の気持ちや考えを尊重したコミュニケーションのこと。具体的には、自分の気持ちや考えを素直に伝えるようにすること、人に伝える時は「私は~と思う」とIメッセージで伝えること、自分と異なる考えを否定するのではなく、「あなたは~と思うんだね」と認めること、です。
② 自分と他者の違いを認める
災害時のストレス反応は、症状も期間も人によって異なります。
感性や感受性の違いによって、同じ出来事を経験しても、数日で回復する人もいれば、何か月も落ち込んだままの人もいます。
ですから、「いつまでも落ち込むな」「その程度で不安になるな」「心配しすぎ」など、否定的な声かけは避けるようにしてください。「心配なんだね」と肯定的共感的な声かけを心がけて欲しいと思います。
③ 幼い子どもには安心安全感が大事
3月には志村けんさんがお亡くなりになりました。いかりやちょうすけさんがお亡くなりになったときも、とてもさびしく悲しい気持ちになりましたが、子どものときにドリフを見て、笑って心が元気になり、支えてもらった方の死は、身近で悲しさが募ります。
このような身近な人の死や著名人の死のニュースに接すると、低学年の子どもや感受性が強い子どもによっては、非常に動揺し、不安がったり、怖がったりするかもしれません。
そのため、
・親から離れようとしない
・一人で部屋にいることができない
・親が死んでしまうのではと過度に心配する
などの反応が見られます。
幼い子どもほど、安心感安全感が重要です。
幼い子どもには、
・ニュースを見せない
・親子でよく会話する「そのうちもとにもどるよ」と安心できる声かけをこころがける
・一緒に寝る
・楽しく遊ぶ
・動物と触れ合う
などの対応が良いでしょう。
高学年以上からは、
一人の大人として、責任ある行動や考え方について、しっかりと対話することが大事です。
④ 自分にあったストレスマネジメントを身につける
外出自粛要請が出ている状況ですので、ご自分にあった家庭でできるストレス発散方法を見つけることが重要です。
ただし、子どもは携帯やゲームのしすぎに注意してください。大人はアルコールを多量に摂取しないように気をつけてください。特に、災害時における男性のアルコール依存症は社会問題にもなっていますので、お気をつけください。
鬱積した感情を家族にぶつけ、家族を傷つけてしまわないように、うまくストレスを発散していきたいですね。
ストレス発散方法は、是非みんなで考えたり、教えあったりしてください。以下に、ストレス発散方法の例を挙げておきます。
・情報や知識を手に入れ、多角的な視点で考える
・オンライン食事会をする
・規則正しい生活をおくる
・ストレッチをする
・よく寝る
・おいしいものを食べる
・掃除する
・本を読む
・音楽を聴く
・映画をみる
・画質や音質をよくする
・友達とテレビ電話をする
・家族でパーティゲームをする
・目標をたてる
・日記をつける
・絵を描く
・アロマをたく
・ベランダで植物を育てる
・家族で料理を一緒に作る
⑤ お別れができない
今回の感染症災害の特徴として、感染した方が重症化し亡くなるまでの期間が早く、面会させてもらえないことが挙げられます。そのため、遺族は大切な家族とのお別れの作業ができません。
お別れの作業がうまくできないと、現実感をもちにくくなり、喪失のショックが長引きやすくなります。「グリーフケア」の知識をもつことが重要です。
※グリーフケアに関する記事はこちら↓
詳細はこちら
⑥ 差別、非難、いじめをしない
もしかしたら、家族やお知り合いでコロナウィルスに感染した方もおられるかもしれません。感染した方は周囲から非難されるのではないかと、すごく不安になり、繊細な状態になっています。
命を懸けながら最前線で治療にあたっている医療従事者の方々や、感染によって命をなくされた方々やご遺族の気持ちを思うと、新たに感染した人を責めたくなる気持ちになるかもしれません。また、不安や恐怖から差別や偏見をしてしまうかもしれません。しかし、ストレスは病気の回復を妨げるだけですので、感染にかかった方の一刻も早い回復を祈り、家族の笑顔がもどるように、周囲の方々には暖かい気持ちで接して頂きますようお願いします。ウィルスに感染した家族が地域で孤立しないように、感染したことで自死する方がでないように、思い遣りを大切にしたいですね。
終わりに
災害時のメンタルヘルスで重要なことは、暖かい気持ちを発信し、交流させ、バラバラになりそうな心をひとつにまとめていくことです。
本記事がその1つになれば幸いです。
てだのふあカウンセリングルーム
2020-04-11新型コロナウィルス感染と感染予防措置等における心理的影響とメンタルケアについて 2020年4月25日更新