トラウマの心理療法とノート法のススメ
記事カテゴリ:トラウマ
トラウマ≒PTSDの治療にはEMDRや動物介在療法、自我状態療法など様々なものがありますが、どんなセラピーでも一番大切なものはカウンセラーとの信頼関係であることは言うまでもありません。
そこで、当カウンセリングルームのトラウマの心理療法では、カウンセラーとの信頼関係と心理教育(=心理学の観点や知識を身につけてもらうこと)を軸にした心理治療を提供しています。
また、トラウマ治療にとって一番重要な要素は、安心感と安全感です。そのため、カウンセリングを行う部屋の環境も大事になります。相談に来られる方が安心して話せることができるよう、当カウンセリングルームの室内はやわらかみのある色合いにしています。
1.フラッシュバックについて
一般に、トラウマ≒PTSDを抱えている人は、その症状のひとつとして「フラッシュバック」が起こります。フラッシュバックが起こると、思い出したくない嫌な記憶が不意に思い出されます。フラッシュバックの形式は具体的な場面の想起だけに限らず、悪夢、過呼吸などの身体症状、空間がゆがむといった認知の歪み等、様々な形で現れます。
フラッシュバックが起こると、安心感安全感が損なわれ、意識がぼうっとするなどのいわゆる「解離症状(かいりしょうじょう)」が起こります。そうすると、普段は絶対にしないようなミスを起こしたり、事故にあったりします。
このようなとき、まず大切なことは、自分の意識を現実にひきもどすことです。動物介在療法は、「セラピードックという犬を面接室に取り込むことによって、面接中に起こる解離症状に対して、犬に触れることで意識をもどす」という効果があります。意識を現実にもどすには、安心できるものに触れるということが一番良い方法です。そして安心感と安全感をとりもどしていきます。
トラウマを抱えている方は、自分にあった意識のひきもどし方を見つけるようにしてくださいね。
2.孤独や疎外感について
次に、トラウマを抱えている人は、孤独感や疎外感を感じ、抱えやすいです。
一般にトラウマと呼ばれる大きな心の傷は、丁寧に治療されないかぎり、その人の生涯にわたって強い痛みをもたらしつづけます。そのため、トラウマという心の傷を抱えた人にとっては、そのトラウマが何十年という遠い昔に起こったものであっても、それは今も生々しく疼いていて、非常に強い痛みをもたらすものとして感じられます。
しかし、過去の体験は周囲の人にはわかりにくいものです。ですから、トラウマを抱えた人が自身の辛さを理解してほしいと思って打ち明けても、周囲の人から「何をまだそんなことを言っているの」とか、「もう大丈夫でしょ」、「いつまでもそんなこと言っていてはだめよ」などと言われ、余計に深く傷つくことになります。
誰かに分かって欲しいと思って話したのに理解されない体験(=「無理解」)は、分かってもらえない苦しみをうみます。無理解が積み重なると、だんだん話すことが怖くなってきます。そのうち、誰にも言わなくなります。
言わなくなるのは、さらに傷つくことを防ぐ術でもあるので、自身を守るためには必要な術なのですが、言わなくなることで、トラウマを抱えた人は孤独感を深めることになってしまうのです。
3.「ノート法」について
そこで、私のトラウマの心理療法では、「ノート法」をお勧めしています。
「ノート法」とは、日々の出来事や沸き起こる感情(特にネガティブな感情)を書いてもらい、カウンセリング時に持参してもらう方法です。
持参していただいたノートを大切に読ませてもらい、クライエントと様々にやりとりします。カウンセラーに伝えるつもりでノートに気持ちを書いてもらうことで、孤独感や疎外感が和らぎます。
「ノート法」は他にも、吐き出す場所ができるので気持ちが落ち着く、書くことで気持ちが整理される、自分に気づくことができる、などの効果もあります。
ですので、カウンセリングに通われていない方も、是非「ノート法」を取り入れてみてくださいね。最近では、TwitterなどのSNSを利用して「闘病記」を書く人もいますが、それも一つの方法ですね。リスクもありますが、良き理解者がみつかるかもしれません。
ただし、人によっては、書くことでネガティブな気持ちが賦活されてしまい、ネガティブな気持ちに飲み込まれる可能性もあります。その場合は書くことをやめることが大切です。トラウマの心理治療において「ノート法」を取り入れる場合は一人で行わず、専門家の人に見てもらいながら一緒に進めてください。
4.トラウマと生活
トラウマ治療だけに焦点化された心理療法は、かえって悪化するリスクもありますので、注意が必要です。トラウマ治療は生活療法とも言えるほど、日々の生活環境を整え、生活のクオリティをあげていくことも重要です。
5.終わりに
アンガーマネジメントの記事でも書きましたが、ネガティブな感情を認めて理解してもらえる体験は、心が傷ついている人にとっては非常に大切な体験です。
ネガティブな感情をおさえこんでしまうと、ネガティブな感情はかえって力をもつことになり、心身に様々な病気をもたらします。
ネガティブな感情も大切な気持ちですから、
あたたかな気持ちを育みながら、
ネガティブな感情に蓋をせず(※)、
ネガティブな感情とつながり、
ネガティブな感情を上手に抱えながら生きていけるようになれる、
と良いですね。
※状態によって、蓋をする、蓋をしておくことも大切です。
トラウマを抱えている方の苦しみが少しでも和らぎますように。
てだのふあカウンセリングルーム
2019-09-19トラウマの心理療法とノート法のススメ